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2005年 08月 24日
その告白は衝撃的ではあったけれど、だからといって何かが変わるようなことはまったくなかった。そりゃあ自分を好いてくれる娘がいたのは嬉しかったけれど、僕は彼女のことをよく知らない。それ以前に女嫌いでもある。僕から乙姫に告白することはたぶんこれからもないだろうし、乙姫が勇気を振り絞って僕に告白したとしても、僕は断るだろう。僕を追ってわざわざ城北に入学してくれたのに…とちょっと心は痛むが、他人の都合をこちらに押し付けられても困るというものだ。 そんなことを考えるうちに、目的地の女子サッカー部更衣室に到着してしまった。 「よう、千里!待っていたわよっ!」 ユキ姉はニヤニヤしながらボクを迎え入れた。更衣室にはユキ姉以外には誰もいない。みんなもうグランドに出ているのだろう。さすがに女の子の格好をしているとはいえ、弟に部員たちの着替えを見せるわけにはいかなかったのだろう。ボクは着替えをユキ姉に渡す。 「姉さん、わざと着替えを忘れてきたな?」 「当たり前じゃん。」 「…。」 あまりの即答に声も出ない。 「姉さん…?さっきも言っていましたけれど、雪絵先輩って弟さんしかいないんじゃないですか?」 「それは…。」 しまった。思わず口に出た言葉を乙姫に聞かれてしまった。しかも二回も言ってしまうと、さすがに聞き間違いとかの言い逃れはできない。 ボクが焦っていると、ユキ姉が突然ボクを抱き寄せた。 「だ・か・ら、“妹”なのよ、“妹”。 …その意味、わかるでしょ?」 ユキ姉は乙姫と、それからボクに目配せをした。 妹と書いて「スール」と読む。勇人は(オタクとしての)例に漏れず、「マリア様がみてる」にハマっていたので、ボクも強引に読ませられたことがある。その知識がここで役に立つとは…。 「そ、そうですわ、お姉さま…。会いたかったですぅ…。」 ボクはネコなで声を出して話をあわせる。 「た、確かに…多摩女みたいな女子校ではよくあることだと聞きましたが…。」 それでも乙姫にとっては、目の前で女の子二人(?)が抱き合っている光景は衝撃的だったらしく、ぽつんと立ち尽くしている。 「とにかく、千里を案内してくれてありがとうね。」 「は…はいっ!」 ユキ姉の声で我に返った乙姫は、好きな人のお姉さんに好印象を持たれたと思ったのだろう。元気な声を上げて更衣室を出て行った。 はーっ…とボクとユキ姉、二人の間に安堵の吐息が漏れた。 「さて…これからあたしにつきあってもらうよ。」 「えっ…着替え届けたら終わりじゃないの?」 「こんなおもしろい玩具、早々簡単に手放せるかっての。さ、行くわよ。」 こうしてボクはユキ姉の妹として、また勇人の彼女として校内を連れまわされた。 最後は男子サッカー部の見学に来たことで、いつもは練習嫌いの勇人が人一倍張り切っていたのはおかしかった。誰もが彼女(ボク)が見に来たから勇人が張り切っていると思っている。 が、勇人がいいところを見せようとしている理由は、ボクではなくユキ姉が見ているからだ…と知っているのは、本人以外はボクだけだろう…。 こうして多少強引な千里のお披露目は終わった。多摩女の制服を着ていたことで「お嬢さま」という印象を植え付けられてしまったのは仕方がないが…自分で言うのもなんだが(そしてとても不本意なのだが)「ちょっと肉付きが悪いけれど、やっぱり勇人が惚れるだけのことはある美少女」という結論が生徒たちの間で出てきてしまったのは問題だ…。いや、不細工と言われるよりは嬉しいけれど…複雑な心境ではある…。 そんな頃…。 「ううっ、お姉さんに会った勢いで、千里くんのアパートまで来ちゃったけれど…。ど、どうしよう…。」 乙姫はとても迷っていた。 「千里くん、一人暮らしを始めたって聞いたから…。男の子の一人暮らしじゃ、食事もあまり作らないよね…。だから料理とか作ってあげたいし…。それから部屋も散らかっていそうだから掃除とかもしてあげたいし…。そしたら千里くんに『よかったら泊まっていかないか?』とか言われちゃったりして…きゃーっ!」 もちろん乙姫が、ボクのアパートの前で一人で盛り上がっていることなど知らないボクは、やっとユキ姉から解放されてクタクタになっていた。しかも明日は週に一回の勇人とのデートだ。更に気が重くなる。明日は早いから、アパートに帰ったらすぐ寝よう。多摩女の制服はまた明日にでもハル姉に返せばいいや…。 そう思い、夕食や風呂を済ませ、さっさと明かりを消して寝てしまったのだが…。 そんなボクのアパートを、外からじっと見つめる瞳があったことを、ボクは朝まで知らなかったんだ。 「なんで…?なんで千里(ちさと)さんが千里(せんり)くんの部屋に入っているの…?」 次の日、千里(ちさと)の格好をしてアパートを出たボクは、道の中央でボクを待っていた乙姫と出会った。 「千里さん…。あなた、今まで千里くんのアパートで何をしていたのっ!?あなたには勇人くんや雪絵先輩がいるじゃない。それなのに…千里くんにまで手を出そうというのっ!?」 乙姫は激しい勢いでボクに詰め寄ってくる。 なんだこの女は…。まさか昨日の夜から今までずっとボクのアパートを見張っていたのか?そんなの、ストーカーと変わらないじゃないか…。 そんな自分の立場もわきまえず、自分勝手にボクを批判する乙姫に、ボクはちょっとカチンときた。なんなんだよ、こっちの気持ちも知らないで…。 ボクは静かに、怒りを抑えた口調で口を開く。 「何をしたって…男と女がひとつ屋根の下で一夜を過ごしたのだから、することはひとつでしょ?わからない?」 「それは…その…キスとか…。」 乙姫は怒りか恥ずかしさかわからないが、真っ赤になって回答する。 「それで終わるわけないじゃない…。」 ボクは妖しい笑みを浮かべる。 「…彼、大人しい顔をしているけど、結構激しいわよ…。」 「な…なっ…。」 乙姫はそこから先の言葉が出ず、口をパクパクしている。 「だって彼、私に夜眠らせてくれないんだもの。おかげで寝不足だし、脚の付け根とか痛くて、今も歩くのが辛いくらいだわ…。」 もちろんボクにそんな経験はない。姉たちの会話をそのまま言っているだけだ。 だが乙姫は、目の前に突きつけられた現実に、もはや口答えする気力さえなくなってしまったらしい。 「もういい?私、これから勇人とデートなんだから、もう行くわよ。千里のことはもう諦めな…。」 パチーンッ! と大きな音が響いた。全く予想していなかった乙姫の平手打ちを、ボクは思い切り受けてしまったのだ。 「あなたに…千里くんは相応しくないんだからっ!覚えていなさいよ、貧乳女っ!わぁーんっ!!」 乙姫はそう捨て台詞(?)を吐き、泣きながらボクの前から走り去っていった。まったく…泣きたいのはこっちだっての。 でもまぁ、少し可哀想だが、これで乙姫がボクにつきまとうことはなくなるだろう。 そう思っていたのだが…。 「お兄さま…。」 「どうした、乙姫?昨日は急に携帯で『友達の家に泊まる』とだけよこしやがって。父さんも母さんも心配してたぞ。」 「そんなことよりもお願いがあるの。お兄さまの力で、一人の女に屈辱を味あわせて欲しいのよ…。」 その言葉を聞き、兄の顔が怪しくニヤリと歪んだ。 「それは…力づくでってことでもいいんだな?」 「ええ。その女はもう処女(おとめ)ではありませんわ。そんなふしだらな女は、淘汰されるべきですもの…。」 「で、その女の名前は?」 「…千里…ですわ、お兄さま…。」 …そう、ボクと勇人が偽りのデートをしているその裏で、恐るべき陰謀が動いていたことを…ボクはまだ知るよしもなかったんだ…。 next act.4「貞操の危機を乗り越えろ!」
by mugenkannote
| 2005-08-24 09:23
| ボク僕
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