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2005年 04月 19日
やっと読み終わりました。西尾維新さんのライトノベル系新青春エンタミステリ「サイコロジカル(上)(下)」。
「クビキリサイクル」・「クビシメロマンチスト」・「クビツリハイスクール」に続く「戯言シリーズ」です。 去年のストックから積んでいましたから、かれこれ五ヶ月間も寝かしていたことになります。 いや、決して物語がつまらないとか文章が読みにくいわけではないんです。ただ、あの濃いキャラクター、少しズレた世界観、そして何よりこの作品のメインとも言える「いーちゃん」の「戯言」が非常に回りくどいというか理屈っぽくて(その分面白いのですが)、読む前にちょっと覚悟がいるのですよね。気構えというか。まぁ、読んでしまえば面白いわけで、ここ数日間で一気に上下巻読んでしまいましたが。 主人公でこの物語の語り部、ぼく(いーちゃん)とヒロイン玖渚友(くなぎさ・とも)と保護者の鈴無音々(すずなし・ねおん)が、いろいろあって友のかつての仲間、兎吊木垓輔(うつりぎ・がいすけ)殺害事件の犯人を捜します。 以下、ミステリなのでネタバレ反転です(犯人も書かれています)。<更に他の西尾氏の作品に関しても。 前作の「クビツリハイスクール」がちょっとした小休止というか、助走のための「ため」のように感じられるほど、今回の作品は弾けています(「クビシメロマンチスト」のように笑える意味での弾け方でなくて、ミステリとして)。 確かにトリックは作中でも書かれていた通り「クビキリサイクル」の正反対というか、亜流ではあるのですが、もはや黄金パターンとなったいーちゃんの(一応の)解決→最後での哀川さんの真相…という美しい流れや、「戯言遣い」いーちゃんの戯言具合とかがかなり「クビキリ」より洗練されていて、個人的にはこちらの方が好きですね。<自分がこの世界観に慣れてしまったから…とも言えますが。 特に今回はいーちゃんの戯言が(時間稼ぎでしかなかった)「クビツリ~」の頃から断然進化して、本当に「使える」戯言遣いになっていますね。成長している感じです。 で、今回の一番の衝撃は、「文中で明確な犯人とトリックが解明されていない」ということ。 とりあえずいーちゃんの出した回答がありますが、「60点」だそうで、その回答で満足してぼーっと読み進めていくと、最後の最後で読者は全てを白紙に戻された挙句、訳もわからず放り出されたまま終わってしまいます。ここら辺りはうまいなぁと。それぐらい自分で考えろ…ということなのでしょう。「クビシメ~」の「X/Y」の謎より本編に直接関わった謎ですよね。<まぁ、作中に伏線は色々張ってあるのですが。 つまり、最後の最後にちょっとした一文が入って、それで終わってしまうんです。 兎吊木垓輔が生きていた。 というたった一つの確認が全てをゼロにしてしまいます。 その回答は…自分で読んで考えてください(苦笑)。 個人的な考えだと…。 友から電子ロックの開け方を聞いた兎吊木は、自由に研究室を出入りできたので、そのまま神足を殺害。目と口を破壊して顔をわからないようにし、腕を切って指紋を消す(腕から切ったのは、いーちゃんのあの回答を引き出させるため?)、髪と髭も切り、自分らしく演出し、自分は髪を坊主にしてサングラスで神足になりきる。 …ということでいいのかな? 文中にも書いてある通り、友はこのことを知っていたし、死体を鑑識した心視先生もたぶん知っていたのでしょう。もちろん潤も(関係ないけれど、なんとなく小唄=潤だなぁとはわかっていました。いや、何となく似ているなぁと思っただけなので、理由はありませんが…)。 あと…これは「りすか」の頃から書いていたことなのですが、西尾さんの作品は殺人者がそのまま生活している…という展開がどうも個人的に納得できないのです。 「りすか」のキズタカは主人公でありながら同級生を殺し、 「クビキリ~」の犯人は今も誰かの姿を借りて生活しているだろうし、 「クビシメ~」の零崎もどこかに逃げたままだし、 「クビツリ~」の姫ちゃんは主人公と同じアパートに住んでいるし、 そして今回…。 いや彼ら、彼女らを殺せとまではいいませんが、人を殺したという幾ばくかの罰はあってもいいと思うのですけどね…。あれじゃあ、殺された人たちの家族や友達が可哀想ですよ…。 …まぁ、戯言ですけどね。
by mugenkannote
| 2005-04-19 13:43
| 読書
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